引いた画が映し出され、白い背景は広告だと分かる。
「ルーカス・クリニック 真の美を求めるあなたに」
主人公のシド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ演)はルーカス・クリニックに勤めています。
セレブから病原菌をもらって同じ症状を、文字通り肌をもって感じるというのが価値観に一つとなっている近未来で、彼はクリニックにくる人たちに病原菌をすすめ、その人たちに注射をうつ仕事をしています。
その一方で、彼は会社にばれないように、商品もととなるセレブの病原菌を自分に注射し、それを裏で流通させる仕事もしています。
それはつまり、同じ症状を自分も受けるという、心身ともに疲弊する仕事でした。
ある日、同じくルーカス・クリニックで働き、「同業者」であるデレクが裏稼業をやっていることがばれてしまい、逮捕されてしまいます。
デレクが行っていた仕事を任されたシドは、著名人であるハンナ・ガイストから「サンプル」をもらい、隠れて自分にそれを打ちました。
その症状はひどいもので、仕事を早抜けするほどのものでした。
ほどなくして、彼女が死んだという報道がされます。
そこからシドに待ち受ける出来事は…。
映画は2012年、カナダとフランスの合作で公開されました。
監督のブランドン・クローネンバーグはこの映画が彼にとって初の長編映画監督作品となっています。
彼の父、デイヴィッド・クローネンバーグも映画監督であり、「変態映画の巨匠」と称されているらしいです(私は彼の監督映画は見たことがありません…)。
斬新な視点から描かれた映画だと思いました。
セレブと同じ病気になること、セレブの細胞が含まれた食べ物を食べることが美意識として広まっている狂気、また、ルーカス・クリニック内部やシドの部屋は不気味なほど白を基調としています。
また、「大衆の共通した価値観」というものへの皮肉を訴えた映画だとも思えました。
今回の映画での題材となった価値観の認識は今後起きるかどうかわかりませんが、歴史的に見ても共通の価値観認識は誤った方向に向けられた時もあります。
そういったテーマも今回の映画に含まれていると感じました。
主人公シド役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの終始病に侵されているような、虚無感に包まれているような演技がすばらしかったです。
グロテスクな表現もあるので、そういったものに拒否反応を起こさない方にはお勧めです(ただし、映画レビューサイトを見たもらえればわかりますが、賛否両論の作品になっています)。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
0 件のコメント :
コメントを投稿