それはついに暴動へと発展しました。
1992年のロストックには難民収容センターがありましたが、収容定員オーバーにより難民があふれかえっていました。
これにより市民の中で排外感情が高まってしまいます。
そんな街に住む青年シュテファン(ヨナス・ナイ演)は悪友たちとも難民問題の話ばかりをしています。
中でも親しい友人であるロビー(ジョエル・バズマン演)は警察とも揉め事を起こすようなチンピラでした。
一方、ロストック、リヒテンハーゲンのゾネンブルーメンハウスに住むベトナム人のリエンは排斥運動のニュースをたびたび耳にし、不安を抱きながら暮らしています。
彼女の家の周りにはジプシー(ロマ)があふれかえっており、ドイツ人からは冷やかしを受けるときもありました。
シュテファンの父、マーティンはロストック市で行政に勤める役人で、街で起こる暴動や事件に狼狽していました。
父の不安は気にしてはいなかったものの、漠然とした外国人排斥感情に対する気持ちを抱いているシュテファンはロビーたちと仲良くしているうちに、自分自身の中にも排斥感情が生まれてきてしまいます。
そしてついに市民のいらだちは頂点に達し、あの暴動が始まってしまいます——。
『ロストックの長い夜』は2014年、ブルハン・クルバニ監督のドイツ映画です。
ロストックはベルリンよりも北に位置する、バルト海に面した旧東ドイツの街です。
暴動があったリヒテンハーゲン地区は街の中でも北側の、海に近いあたりにあります。
また、暴動の場所となったマンション、ゾネンブルーメンハウス(= ひまわりハウス)は今なお残っています。
ドイツでは歴史的にも移民に関してとてもセンシティブで、今回の映画の題材となった外国人排斥暴動と同様、第二次世界大戦中はユダヤ人排斥、現在でもシリアなどからの難民といったことがあります。
現在でもネオナチと呼ばれる、排他主義的感情を持つ人々もいます。
監督自身も、両親がアフガニスタンから亡命してドイツで生まれた方らしく、移民問題についての映画製作で考えるところもあったと思いました。
映画の最初から登場する、落ちているビンを集める子どもたちの最後のシーンや、最初から終盤までのシーンがモノクロ、暴動が発生した当たりの時刻からカラーになるという表現も考えさせられるものとなっています。
あまり有名な映画ではないかもしれませんが、実話を基にした映画、特にドイツ・ヨーロッパの歴史が好きな方はぜひご覧ください。
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